中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)

中小企業倒産防止共済とは、どんな制度かご存じでしょうか。節税効果が期待できたり、もしもの場合に備えられたり…中小企業にとって、とてもメリットが大きい制度です。

中小企業倒産防止共済とは

中小企業を対象とし、取引先の倒産等の影響により、連鎖して倒産してしまったり、経営難に陥ってしまう事態を防止するための共済制度です。

早急に資金調達をする必要があるけど、銀行の融資は待っていられない…という場合にも、倒産防止共済ならスピーディーに一時的な運転資金を確保することができます。

メリット

加入のハードルが低い

継続して1年以上事業を行っている中小企業者で、以下の加入要件に該当する場合に加入することができます。

■会社または個人の事業者
次表の各業種において、「資本金の額または出資の総額」「常時使用する従業員数」のいずれかに該当すること。

業種 資本金の額または出資の総額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業、その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く) 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

参照:中小機構「経営セーフティ共済/加入資格」

■組合
次のいずれかに該当すること。

  • 企業組合、協業組合
  • 共同生産、共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合

※対象外 医療法人、農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人等

その他、「会社または個人の事業者」「組合」の要件を満たしている場合でも、一部加入できない条件があります。詳しい条件は、こちら(中小機構「経営セーフティ共済/加入資格」)をご確認ください。

掛金は全て経費として計上できる

掛金として支払った分すべてを経費に計上することができます。毎月の掛金を20万円とすると、年間で240万円が経費に計上されるということです。また、前納制度を期末に使うことで1年間で最大460万円を経費にすることができます。

(11ヵ月分 × 毎月の掛金20万円)+(前納する12ヵ月分 × 毎月の掛金20万円)= 460万円

掛金額の調整が可能

倒産防止共済は少額からの加入も可能で、掛金は月5,000円~200,000円(年間6万円~240万円)で、5,000円単位で自由に選択することができます。

解約時に掛金が100%返金される(※条件あり)

掛金を40ヵ月以上納付していれば、解約時に掛金が100%返金されます。貸付を受けている場合には、貸付残高分を控除した額が返金されます。掛金納付月数に応じた解約手当金の支給率は、下表のとおりです。

掛金納付月数 任意解約 みなし解約 機構解約
1か月~11か月 0% 0% 0%
12か月~23か月 80% 85% 75%
24か月~29か月 85% 90% 80%
30か月~35か月 90% 95% 85%
36か月~39か月 95% 100% 90%
40か月以上 100% 100% 95%

参照:中小機構「経営セーフティ共済/解約手当金について」

任意 解約:契約者により、任意でいつでもできる解約
みなし解約:契約者死亡、会社の解散や事業譲渡などにより解約とみなされる場合の解約
機構 解約:中小機構による、契約者のペナルティ(12ヵ月分以上の掛金の滞納、共済金の貸付等に不正行為を行った等)にともなう解約

最大8,000万円までの貸付がうけられる

「実際の損害額」もしくは「納めた掛金の10倍の金額」のいずれか小さい額の貸付を受けることができます。

(例)700万円納付済み、5,000万円の売上債権が回収できなくなってしまった。
→700万円 × 10 > 5,000万円 = 5,000万円
→5,000万円の借入ができる

売掛金債権が生じない事業者*は、節税効果の恩恵を受けることはできますが、貸付を受けることはできません。

*売掛金債権が生じない事業者 金融業者、不動産業者、一般消費者を取引先にする事業者

貸付は無担保・低利率

取引先の倒産に関係なく、解約手当金の95%を上限に貸付を受けることができるため、一時的な資金調達手段としても活用することが可能です。

利率 年利0.9%
返済

期間:1年間 方法:一括
※返済が遅れると年14.6%の違約金が発生する

貸付額

30万円~(5万円単位)
※詳細は下記「一時貸付金の借入限度額」参照

貸付金の借入限度額 掛金納付月数 一時貸付金の借入限度額
1か月~11か月 0円
12か月~23か月 掛金総額 × 75% × 95%
24か月~29か月 掛金総額 × 80% × 95%
30か月~35か月 掛金総額 × 85% × 95%
36か月~39か月 掛金総額 × 90% × 95%
40か月 掛金総額 × 95% × 95%
掛金総額が800万円の場合 800万円 × 100% × 95%(760万円)

参照:中小機構「経営セーフティ共済/借入限度額について」

承継することも可能

合併、相続、分割、事業全部の譲渡があった際にも、承継・譲受する側が倒産防止共済の加入資格を満たしていれば、共済契約を承継できます。

承継すると、共済金や一時貸付金も引継ぐことになるため、会社の状況などを踏まえて検討するようにしましょう。

まとめ

倒産防止共済についてご理解いただけたでしょうか。節税対策を探している方、今後に備えて節税の手段を知っておきたい方、少しでも参考になっていましたら幸いです。

08/23/2023