【圧縮記帳】新たな設備の導入と補助金

燃料費の高騰が止まらないが、使用量・時間を減らすと作業効率が下がってしまう…そこで、燃費の良い最新の設備を導入し、作業効率を維持・向上させつつ燃料費を抑えたい…そのために、国の制度を利用し補助金を使って設備を購入しようとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

補助金の申請と設備の購入だけで満足してしまうと、決算の際に思わぬ税金が発生してしまうので、そんなときに活用できる「圧縮記帳」についてご紹介します。

設備購入の際に補助金を受取っても、収入として扱われるため、取得年度の利益に上乗せされてしまいます。

一方で、原則10万円以上の機械、車両等は資産として減価償却をしなければいけないため、補助金を使って購入しても経費としては耐用年数に応じて処理しなければなりません。※青色申告を行う中小企業や個人事業主は、特例により30万円未満まで全額償却できます。

例)営業利益400万円、補助金100万円を使って300万円の機械(耐用年数10年)を購入。※簡略化するために定額法を用いて計算、最終的な帳簿価額を0円とする。

純利益 400万円 + 100万円 = 500万円

減価償却費 300万円 ÷ 10年 = 30万円

となるため、この年度では補助金収入100万円に対して30万円しか経費で落とすことができません。

これでは、利益が増えることで納税額が増えてしまい、補助金としての効果が薄くなってしまいます。そこで圧縮記帳による会計処理を行うことで、設備導入初年度の税金の負担を軽減することができます。

圧縮記帳

圧縮記帳をつかう際には、一定の条件を満たす必要があります。また、圧縮記帳をつかう際には、「直接減額方式」と「積立金方式」の2つの会計処理があります。

圧縮記帳をつかう条件

・国または地方公共団体から受取る補助金、またはこれらに準ずる政令に定める交付を受けること(国庫補助金等)

・国庫補助金等を交付された事業年度に固定資産の取得や改良に充てたこと

・国庫補助金等が交付された事業年度の末日までに国に返還不要が確定したこと

直接減額方式

直接減額方式では、補助金収入分の額を取得した設備から減額します。そして、残った設備の金額を減価償却していきます。

例)補助金100万円を使って300万円の機械(耐用年数10年)を購入。※簡略化するために定額法を用いて計算、最終的な帳簿価額を0円とする。

【補助金と同額の100万円を機械圧縮損として計上】

機械購入費300万円 – 機械圧縮損100万円 = 200万円

200万円 ÷ 10年 = 20万円

20万円を減価償却費として10年かけて落としていく。

積立金方式

積立金方式では、補助金収入分を積立金に計上し、減価償却の際に取崩していきます。

例)補助金100万円を使って300万円の機械(耐用年数10年)を購入※簡略化するために定額法を用いて計算、最終的な帳簿価額を0円とする。

補助金と同額の100万円を圧縮積立金として計上

機械購入費300万円÷10年=30万円

圧縮積立金100万円÷10年=10万円

減価償却費30万円 圧縮積立金取崩額10万円

この差額の20万円が結果的に経費となります。

圧縮記帳を行うと、補助金収入は相殺されますが、その分減価償却費も減るため、最終的な課税負担は圧縮記帳を行わない場合と変わりません。

しかし、補助金を交付された初年度の課税負担を減らす効果があるため、補助金を使って設備の導入や改良を検討されている方は会計処理についても考えてみてください。

07/14/2023